如月さんの指記

2月から始めた、手記ではなくて指記。スマホで書くから。

ダークナイト:背中を押すだけ

ダークナイトという映画をNetflixで観た。という映画、などという遠いもののような表記だが、マーベル作品の中では興行もよろしく、シリーズの中では有名なものだ。私は小心者で、ホラーに近いものを「忙しい」だの「他に気になるものがある」だの言って避けていたので、口が裂けていた彼のことも避けていた。避けるだけに。はいはい。

知らない人は少ないかもしれないが、ダークナイトバットマンvsジョーカーのバトルものだ。ジョーカー役は代々名優だと言われているが、確かにそうだと思った。ちなみにこの作品を観るきっかけとなったのは、先日アクアマンを観たからである。この折に初めて観た、というくらいなので、マーベルファンというわけでもバットマンファンというわけでもない。

とはいえバットマンとアイアンマンは好きだ。何が好きかというと、はっきりしているところが。「君の特技は何かい?」と訊きまわるインタビュアーがいれば、アベンジャーズの皆様は順番に特殊能力を挙げていくだろうが、バットマンとアイアンマンは「金持ち(rich man)」と一言で片がつく。アイアンマンに関しては「天才(genius)」かもしれないが。これも受け売りではあるのだが、バットマンは生来の金持ち、アイアンマンはいわゆる成金だ。その点を含めてもバットマンを象徴する一言は「リッチマン」に尽きる。かっけー。

金で解決している部分が十二分にあるので、使う機器の説明も最低限でスマートだ。町中の人間の携帯端末をハッキングして、ゴッサムシティを掌握する様など、倫理に抵触していることはさておき大変わかりやすい。手前で仕掛けを見せているシーンもあるので、最低限どころか猿どころか猫でも私でもわかるのかもしれないが。

映画もテレビも、ドラマが生まれている時点で人間模様が誇張され、エッジが効いて、短略化されるのだが、そもそも国民性が違う海外の作品は、欲や怒りや悲しみ、喜びが、分かりやすくて頭を使いすぎないので、息抜きのためにはとてもいい。とはいってもヒロインが死んだり友人が復讐鬼になったりする理不尽さ、不条理さ、虚無感も忘れず、全く手放しに思考の外という名の宇宙へ放たない本作品は、人気であることも頷ける。

上記の通り、この作品ではヒロインが死に、街の平和を共に守ろうと意気込んでいた「ライトナイト」と呼ばれる友を、ジョーカーの巧みな話術で狂気の男に仕立て上げ、最後は殺した。タイトルは光の騎士と闇の騎士(ダークナイト:バットマン)で街を守ろうという彼らの意思を、脆くも崩し去られるという皮肉を込めている。

一見ジョーカーの恐ろしい罠のように思われるが、どんな正義も簡単に真逆の、悪へと変わってしまう、人間の本質を突いている。きっかけは些細なことなのだ。戦争は英語でWARというが、これは誰もが自分たちが正しいと思い込んでいる、思わなければやってられないという「We are Right」からきているように、この理不尽は常に隣り合わせだと教えてくれる。

とっ散らかった話をまとめると、関連作品をさっと見やすいNetflixAmazonプライム・ビデオは、大変便利でよろしいという、それに尽きる。